長期優良住宅認定制度って?~新築における認定基準と優遇~
現在日本の住宅環境は、優良な住宅を長期にわたって利用する「ストック活用型」へと転換しつつあります。
国もこれを後押ししており、平成21年6月4日に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき始まったのが、
「長期優良住宅認定制度」。
平成28年4月より、長期優良住宅の認定は新築だけでなく既存の住宅の増改築も対象となりましたが、
今回は新築住宅について解説します。
⇒増築・改築住宅の「長期優良住宅認定制度」についてはこちらをご覧ください。
「長期優良住宅」とは
「長期優良住宅」の大まかな認定基準は次の4つ。
2、居住環境等への配慮を行っていること
3、一定面積以上の住戸面積を有していること
4、維持保全の期間、方法を定めていること
上記の全ての措置を講じ、必要書類を添えて所管行政庁(都道府県、市または区)に認定申請を行えば、「長期優良住宅」としての認定を受けることができます。
認定後にも「維持保全計画」に基づく定期的な点検などが必要です。
「長期優良住宅」に認定さた新築住宅はこんな優遇が受けられます
「長期優良住宅」に認定された住宅に暮らすことは、長い間優良な住宅に住めるという以外にも色々なメリットがあるんですよ。
地域型住宅グリーン化事業(長寿命型)
「地域型住宅グリーン化事業」※1に採択された工務店が整備する「長期優良住宅」について、「長寿命型」※2の補助金を受け取ることができます。
補助の対象となるのは経費の1割以内の額で、かつ住宅1戸あたり100万円が上限。
また、地域材利用には+20万円、三世代同居への対応へは+30万円を上限として、予算の範囲内で加算されます。
補助金は直接施主に支払われるのではなく、建築を請け負った工務店へ支払われます。
地域の住宅産業に関係する各事業者(原木供給事業者・製材・建材・設計・中小工務店)で構築されるグループが対象です。
税の特例措置
「長期優良住宅」の認定を受けることで、税の特例措置が一般の住宅よりも拡充されます。
(※適用期間が2種類あるので注意して下さい。)
〇平成33年12月31日までに入居
◆所得税(住宅ローン減税)
10年間毎年ローン残高の1.0%が所得税額から控除される「住宅ローン減税」の控除対象限度額が、
4,000万円から5,000万円へ引き上げられます。
◆所得税(投資型減税)
ローンを組まずに自己資金で取得した場合でも利用できるのが「投資型減税」。
「長期優良住宅」への性能強化にかかる標準的な費用相当額(上限650万円)の10%を、
その年の所得税額から控除します。(控除しきれない部分は翌年度の所得税から控除)
※「住宅ローン減税」と「投資型減税」の併用はできません。
〇平成32年3月31日までに入居
◆登録免許税
税率の引き下げ幅が更に大きくなります。
①「長期優良住宅」を新築、または新築住宅を購入した場合の「所有権保存登記」が
0.15%から0.1%へ。
②建築後使用されたことのない「長期優良住宅」を取得した場合の「所有権移転登記」が
戸建て住宅の場合 0.3%から0.2%へ。
マンションの場合 0.3%から0.1%へ。
◆不動産取得税
課税標準からの控除額が、1,200万円から1,300万円へ増額されます。
◆固定資産税
軽減措置(2分の1減額)の適用期間が延長されます。
戸建て住宅の場合 1~3年間⇒1~5年間
マンションの場合 1~5年間⇒1~7年間
詳しくは⇒国土交通省へ
住宅ローン金利の引き下げ
「長期優良住宅」を取得するために住宅ローンを組む場合には、金利の引き下げ等を受けることが出来ます。
◆フラット35S
【金利Aプラン】において「フラット35」の借入金利から
当初10年間、年0.25%引き下げます。
※【金利Bプラン】の場合は当初5年間。
※「フラット35S」は平成31年3月31日までの申込受付分に適用されますが、予算金額に達する見込みとなった場合は、受付終了となります。
◆フラット50
最長50年の全期間固定金利「フラット50」が利用できます。
「フラット50」は住宅売却の際に、購入者へローンを引き継ぐことが可能です。
地震保険料の割引き
「長期優良住宅」の認定基準には一定の耐震性が求められますが、
住宅の耐震性に応じて地震保険料の割引が受けられます。
◆耐震等級割引き
「住宅の品質確保の推進等に関する法律(品確法)」に基づく耐震等級を有している建物は、
耐震等級1⇒10%の割引き
耐震等級2⇒30%の割引き
耐震等級3⇒50%の割引き
◆免振建築物割引き
品確法に基づく免振建築物は、50%の割引き
※「耐震等級割引き」と「免振建築物割引き」を重複して受けることはできません。
「長期優良住宅」(新築)の認定基準をもう少し詳しく解説すると
「長期優良住宅」へ認定されるには次のような基準を満たす必要があります。
◆劣化対策
劣化対策等級3+構造の種類に応じた基準。
・木造:床下空間に点検に充分な高さを確保、床下・小屋裏に点検口設置など。
・鉄骨造:木造の基準または、鋼材の厚さ区分に応じた防錆措置。
・鉄筋コンクリート造:セメントに対する水の比率を抑えるか、コンクリートのかぶり厚を厚くすること。
◆耐震性
下記のいずれかであること。
・耐震等級2。
・耐震等級1かつ、安全限界時の層間変形が1/100(木造の場合1/40)以下。
・品確法に定める免振建築物。
◆維持管理・更新の容易性
・維持管理対策等級(専用配管)3。
共同住宅の場合は更に、
・維持管理対策等級(共用配管)3。
・更新対策等級(共用排水管)3。
◆可変性(共同住宅・長屋に適用)
躯体天井高さが2,650㎜以上であること。
◆バリアフリー性(共同住宅に適用)
・高齢者等配慮対策等級(共用部分)3。
※一部基準を除く
◆省エネルギー性
・断熱等性能等級4。
◆居住環境
地区計画・景観計画・条例による街並みなどの計画・建築協定・景観協定などの区域内にある場合には、これらの内容と調和を図ること。
◆住戸面積
・戸建て住宅:75㎡以上。
・共同住宅:55㎡以上。
※少なくとも、階段部分を除く1階の床面積が40㎡以上。
※地域の実情に応じて引上げ・引下げあり。
◆維持保全計画
下記について、定期的な点検・補修等に関する計画を策定。
・住宅の構造耐力上主要な部分
・住宅の雨水の侵入を防止する部分
・住宅に設ける給水又は排水のための施設
(点検の間隔は10年以内。維持保全の期間は30年以上。)
「認定手続き」と「工事完了後」
認定手続き
長期優良住宅認定の申請は着工前までに行う必要があります。
(申請手続きは、施工業者が代理で行う事も可能。)
①「長期優良住宅建築等計画に係る技術的審査」の依頼
↓ 「登録住宅性能評価機関」へ審査を依頼し、「適合証」の交付を受けます。
②適合証の交付
↓ 「適合証」に「認定申請書」「添付図書」※1を添えて申請します。
③所管行政庁への認定申請
↓ 確認申請の受付後、審査を経て「認定通知書」が交付されます。
④認定・着工
※1添付図書とは
1、設計内容説明書
2、各種図面・計算書
3、その他必要な書類(所管行政庁が必要と認める図書)
工事完了後
①工事完了
↓ 認定を受けた計画に基づいた工事が完了した旨の報告が必要です。
②維持保全計画に基づく点検
↓ 点検記録を作成・保存します。
③調査・修繕・改良
↓ 必要に応じて、調査・修繕・改良を行い、その記録を作成・保存します。
④維持保全計画の見直し
調査・修繕・改良の結果を踏まえ、必要に応じて「維持保全計画」の見直しを行います。
※地震・台風時には臨時点検を実施。
まとめ
「長期優良住宅」の認定戸数は年間10万戸程度。
新築される一戸建て住宅のおよそ4戸に1戸は「長期優良住宅」の認定を取得しています。
国が普及の促進をしているため、税金の特例措置など様々な恩恵を受けることもできます。
「優良な住宅を長期にわたり良好な状態で使用する」
それがこれからの時代なのです。
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