記録的豪雨「平成30年7月豪雨」は、なぜおこったのか
西日本を中心に降り続いた記録的な大雨では広い範囲が甚大な被害に見舞われ、平成に入って最悪の死者・行方不明者数となりました。
今回気象庁は、数十年に一度の重大な災害が予想される場合に出す『大雨特別警報』を6日から8日にかけて福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取、京都、兵庫、岐阜、愛媛、高知の11府県で発表。
この数日間に及ぶ豪雨はなぜ起こったのでしょうか?
また『大雨特別情報』とはどのようなものなのでしょうか?
豪雨の原因
今回の豪雨では、降り始めの6月28日から7月8日までの積算雨量が、高知県、徳島県、岐阜県、長野県の4県15のアメダス地点で1000ミリを超え、
特に被害の大きかった広島県、岡山県、愛媛県の72時間雨量の最大値は、平年の7月1か月間に降る雨の量の2倍近くにものぼりました。
この大雨の大きな要因は、
太平洋高気圧の縁を回るように暖かく非常に湿った空気が梅雨前線に向かって流れ込んでいたこと。
そして、梅雨前線が長い期間同じ場所に停滞したということです。
背景には台風7号の影響もあります。
沖縄の南海上にかなり大きな規模の積乱雲が群れをなすような塊があり、その中で台風7号が発生したのですが、
台風はその大きな規模の積乱雲群をすべて集めきれずに、小さくまとまった形で北上し、7月3日から4日にかけて対馬海峡を経て日本海を北東に進みました。
その結果、集めきれなかった積乱雲群が沖縄の南海上にとどまり、その後ゆっくりと北上。
これが太平洋高気圧の張り出しの縁に当たり、梅雨前線に大量の水蒸気が供給され続けた結果、これほど広範囲での豪雨となったのではないかと考えられています。
また、もう一つ影響していると考えられるのが、
高気圧・低気圧を動かす上空の偏西風の蛇行です。
日本の西側で偏西風が北へ湾曲し大気の流れがよどみ、北のオホーツク海高気圧と南の太平洋高気圧との間で、梅雨前線が横たわりつづけました。
そして、7日には上空の寒気が西から近づき、大気の状態が一層不安定になったのです。
大雨特別警報
気象庁は重大な災害の起こるおそれがある時に、『警報』を発表して警戒を呼びかけますが、
『警報』の発表基準をはるかに超える数十年に一度レベルの大雨や大津波等が予想され、重大な災害の起こるおそれが著しく高まっている場合には、最大級の警戒を呼びかける『特別警報』を発表します。
(気象の分野は大雨、暴風、高潮、波浪、暴風雪、大雪の6種類)
『特別警報』は、2011年3月の東日本大震災などを教訓に創設されました。
従来の『警報』では災害発生の危険性が著しく高いことを強く訴えることが出来ず、適時的確な避難勧告・指示の発令や、住民自らの迅速な避難行動に必ずしも結びつかないケースがあったからです。
大雨の『特別警報』の場合、集中豪雨や台風により48時間の降水量や地中に溜まった雨の量が「50年に一度」程度の値を超えた時などに発表されます。
防災気象情報(大雨の場合)の段階
注意報(災害の恐れがある)
雨の強さが増す時
・市町村の対応 ⇒ 避難準備
・住民の対応 ⇒ 非難の準備、高齢者や乳幼児は避難する
警報(重大な災害の恐れがある)
大雨となる時
・市町村の対応 ⇒ 避難勧告
・住民の対応 ⇒ 速やかに避難
特別警報(重大な災害が迫っている)
広い範囲で数十年に一度の大雨となる時
・市町村の対応 ⇒ 避難指示(緊急)
・住民の対応 ⇒ これより前の段階で非難を完了しておく
詳しくは気象庁のHPをご覧ください。
「自分の所は大丈夫だろう」は禁物
人間の心、は予期せぬ出来事に対して『正常性バイアス』が働き、
「自分は大丈夫だろう」「まだ大丈夫だろう」と思ってしまいがちですが、これは大変危険です。
特別警報や避難指示が発表されない地域でも、状況は刻一刻と変わります。
テレビ報道や気象庁のホームページで公開している「危険度分布」という防災情報などをチェックしながら、早め早めの避難行動をとりましょう。
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