不動産の査定には費用がかかる?査定書を見る際のポイントも紹介
不動産を売却する前に不動産会社に査定依頼をすることで、どのくらいの価格で売却できるのかを把握できます。その不動産の査定にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
今回は、不動産の査定にかかる費用と査定書を見るポイントについて解説します。
不動産の査定で費用がかかるケースとは
不動産査定と似た言葉で不動産鑑定という言葉がありますが、不動産査定と不動産鑑定では目的や内容がまったく異なります。
どちらも不動産の価格を算出するものですが、間違って利用しないためにも不動産鑑定がどのようなものなのかを把握する必要があります。
不動産鑑定には費用がかかる
不動産鑑定とは、国家資格をもった不動産鑑定士による不動産の査定(鑑定)です。不動産鑑定は費用がかかり、不動産の種別にもよりますが約20万円〜30万円の費用が発生します。
また、鑑定書の作成には2週間程度かかるため、とりあえずいくらぐらいで売れるか知りたいという人にとっては不向きだといえるでしょう。
では、不動産鑑定とはどのような際に依頼をするのでしょうか。
不動産鑑定を利用するケースとは
不動産鑑定をもっとも多用する機関は、国土交通省です。国土交通省は毎年3月に公示価格と呼ばれる指標を発表しますが、公示価格は全国26,000地点で測定されます。
公示価格は国土利用法の査定に使用したり、相続税や固定資産税評価額の算出に使用したりします。このように、一般の売主にとっては無縁のように思える不動産鑑定ですが、一般の人でも利用するケースがあります。
たとえば、遺産相続の資産価値を算出するときや財産分与をするときの不動産査定は正確な鑑定額が必要となるため、司法書士や弁護士からも不動産鑑定を推奨されます。また、大きな投資用不動産や商業施設に発生する税金を正確に計算する際などにも不動産鑑定が活用されます。
なお、不動産鑑定は不動産鑑定士が行うため、不動産会社に鑑定を依頼しても対応できないことが多いです。
不動産鑑定は通常の売却時には不要
不動産鑑定は非常に正確な鑑定額が算出される一方、費用がかかります。しかし、不動産を売却するときは不動産鑑定士による鑑定は必要ありません。
理由は、不動産売却において売却価格は売主の意向が強く反映されるケースが多く、正しい不動産の価値に沿っている必要がないからです。つまり、最終的な売却価格は売主が決めるため、不動産鑑定士による正確な不動産鑑定は不要なのです。
不動産会社が行う売却査定は費用がかからない
不動産会社が行う査定について解説します。不動産査定は、無料で素早い売却査定が可能です。そのため、多くの売主は売却するときに不動産査定を利用します。
不動産会社の不動産査定が無料である理由
不動産会社に査定を依頼し、費用を請求されることはありません。これは、報酬形態については宅地建物取引業で制限されていることが理由です。
宅地建物取引業者である不動産会社は仲介手数料以外に報酬を請求してはいけないというルールが定められており、査定の費用やコンサルティング料を一般顧客に求めることができません。
そのため、不動産査定はあくまでも売主が売却の判断をするための提案、という位置づけであるため無料となります。
査定の種類と特徴
査定の種類は机上査定と訪問査定の2種類があります。それぞれ特徴が異なっており、使い分けもしくは併用することで納得のいく査定額を知ることができます。
机上査定
机上査定とは、不動産会社が現地に行かずに売主から入手した不動産情報だけで査定をする方法です。周辺地域の成約事例や前面道路の広さ、方位、土地形状といったポイントを確認し、査定額に反映させます。
最近ではGoogleマップの普及により現地に行かずとも外観や土地形状を確認できるため、比較的精度の高い査定額を知ることができるでしょう。
訪問査定
机上査定である程度納得のいく査定額であった場合、より正確な査定額の算出をしてもらうために訪問査定を依頼します。訪問査定は査定地に直接不動産会社が訪問し、以下のようなポイントを確認し、査定をします。
不動産種別 | チェックポイント |
---|---|
中古戸建 | 書類関係、設備、外観の状態、損傷個所 |
マンション | 書類関係、設備、損傷個所、大規模修繕計画の内容 |
土地 | 書類関係、土地の全体像、周辺環境、高低差、擁壁の有無と状態 |
また、訪問査定時は売主と不動産会社が直接会うタイミングとなるため、査定額とは別に販売方法や具体的な売却価格、売却時期などを打合せするのが一般的です。つまり、訪問査定は机上査定よりもより売却を具体化させるための方法だといえるでしょう。
売却査定はどこに依頼すればいい?
売却査定は不動産会社に依頼するのが一般的ですが、査定地のエリアに強く実績が多い不動産会社を選ぶようにしましょう。
また、不動産の売却は、取引が完了するまで1人の営業スタッフが担当するケースがほとんどです。そのため、担当者が信頼できるかどうかは非常に重要なポイントです。納得のいく売却をするためにも、不動産会社と担当者はしっかり吟味しましょう。
査定書を見る際のポイント
不動産を売却するとき、査定を不動産会社に依頼しますが、最終的に売却価格を決定するのは売主です。売却価格を決める際には、不動産会社から提示された査定額をベースに検討しますが、査定書を見る際のポイントは知っておくべきです。査定書の使い方と見るポイントについて解説します。
価格のイメージを知る
査定書の目的は、おおまかな売却価格のイメージを知ることです。売主は売却を検討し始めた段階で、どのくらいで売りたいのかを考えるでしょう。
しかし、売主の希望価格が実際に売れる価格と差があることもあります。そのため、実際に売れる価格がどのくらいなのかをイメージするために査定額を確認しましょう。
また、不動産会社によっては単なる査定額だけでなく、たとえば以下のような価格を提示することもあります。
- スタンダード価格:一般的な査定額となっており、約3カ月以内で売却できる価格
- チャレンジ価格:スタンダード価格の10%〜20%ほど上乗せした査定額で、売出し価格として利用するケースが多い
- 買取価格:スタンダード価格の70%前後となる査定額で、早期売却をする場合や売却価格の最低価格として利用する
売却価格を決める際の重要なポイントにもなるため、このような記載がある場合は必ず参考にしましょう。
価格の算出根拠となるデータを確認する
査定額は次に挙げる2つのデータが根拠となりますが、査定額が算出される方法を知ることでより精度の高い売却価格を設定できます。
- 路線価
- 成約事例
不動産会社が提示する査定額を鵜呑みにするのではなく、しっかりと査定の根拠を確認しましょう。
路線価
路線価とは国税庁が公開している道路の価格で、相続税や贈与税の指標となります。不動産会社は土地の査定をする際にはこの路線価を使い、前面道路の価格と査定地の面積を掛け合わせて基準価格を算出します。
路線価は方位や道路の状況といった具体的な要素が含まれているため、土地の査定では非常に重要な指標だといえます。路線価は国税庁の「財産評価基準書」にて確認ができます。
成約事例
成約事例はレインズと呼ばれる不動産会社データベースが基になっており、売主は成約事例を知ることでより売却価格の相場をイメージできます。
また、土地形状や築年数によっても成約価格は大きく変わるため、なるべく多くの成約事例を参考にしましょう。
レインズは不動産会社しか閲覧ができません。しかし、「レインズ・マーケット・インフォメーション」は一般の方でも閲覧が可能です。こちらは個人情報法保護のために物件住所の詳細などは確認できませんが、相場を確認する程度なら十分だといえます。
査定依頼=売却依頼ではない
査定依頼をしたからといって必ず売却する必要はありません。不動産会社から提示された査定額を見て売却をやめるケースもあれば、「こんな価格で売れるなら」という気持ちになり売却を決めるケースもあります。
このように、不動産査定依頼は売却を決める判断材料や資産価値の確認で利用されることも多いです。そのため、保有している不動産の売却を少しでも検討しているのであれば、まずは不動産の査定を依頼しましょう。